[平成17年度〜平成19年度]
このコーナーの記述は平成20年3月現在のものです。
わが国の水道は97%を越える高普及率を達成しており、国民の健康を維持する上で不可欠な施設であるとともに、社会経済活動を支える基盤施設として益々その重要性は高まっている。平成16年6月に策定・公表された「水道ビジョン」が指摘しているように、今後とも水道は環境保全を考慮しつつ、安全・安心な水を持続的に安定して供給していくことが必要不可欠となっている。しかしながら、日本の高度経済成長期を支えてきた浄水施設のうち相当数が今後10年以内に更新時期を迎えることとなり、水源水質の悪化と相まって、それぞれの地域の実情にあった環境負荷の少ない浄水処理技術が求められている。
本研究「安全でおいしい水を目指した高度な浄水処理技術の確立に関する研究」(e-WaterUプロジェクト)は上記の背景を受け、各種の原水条件に応じた最適浄水処理プロセスの選定指針の作成、おいしい水を目指した臭気原因物質等の検知と除去方法等の各種研究を実施することにより、需用者が求めている安全でおいしい水を供給する効率的な浄水技術の選定手法を確立し、水道事業体を支援することを目指している。
研究期間は平成17年度〜19年度の3年間を予定しており、必要な研究費は厚生労働省の厚生労働科学研究費補助金および本研究に参加する企業が拠出する負担金から支出され、国立保健医療科学院、大学、水道事業体および企業、その他水道関連団体の協力のもと、当センターが中心となって実施している。
また、e-WaterUという愛称は、Environmental,Ecological,Energy-saving,Economicalというような面を考慮したものであると同時に、“いい水”を作り出すための研究開発という意味が込められており、平成14年度〜16年度に実施した前プロジェクトを引き継いだものである。
日本全国の原水水質を水質項目によりグループ分類を行い、その後、単位浄水プロセスの組み合わせによる浄水システムについて、浄水水質の安全性、維持管理性、省エネルギー、環境負荷低減を考慮したLCA的観点、排水、汚濁処理プロセス、監視・計装システム等の項目により評価し、最適な浄水プロセスの指針の検討を行っている。
臭気原因物質としては、従来、2-MIB、ジェオスミンが代表的物質として挙げられているが、これらが検出されていない原水に対しても、浄水処理後、又は、給水末端にて、臭気が発生するケースがある。これは、原水中に含まれる臭気原因物質等が、塩素処理により変性し、何らかの臭気物質を生成している可能性がある。
より安全でおいしい水を供給するために、未知の臭気原因物質をできるだけ早く検出し、取水方法の変更、浄水処理の強化等により、安全性・快適性の向上を図る研究を行っている。
本研究の最終的な成果として、浄水施設の整備や更新に必要な指針作りを目指した技術資料を作成し、新技術の推進を図るとともに、施設整備および更新時に参考になる資料として活用されるものを目指している。
本研究は、学識者、水道事業体および関係企業の専門家で構成される調整委員会を設けるとともに、そのもとに研究の計画および内容を具体的に推進し成果を取りまとめる総合研究委員会等を設置し、円滑に研究が進められる体制を整備している(図4)。

原水水質、目標とする浄水水質、維持管理性、およびコスト等を考慮した適切なシステムの選定手法、システム評価手法を開発し、事業体の施設更新時により信頼性のある処理方式が選定できることを目的としている。膜ろ過、オゾン等の高度処理を含む基本的な処理システムを類型分けし、主要な処理システムの水質因子、操作因子を抽出することにより、各システムあるいはプロセスの機能評価手法を検討している。基本的な処理システムとして12のフローを設定し、浄水処理方法検討における水質項目として40項目を抽出し、各々のプロセスでの各水質項目の除去性能並びに運転操作・監視に関わる重要な水質項目を分類整理している。併せて、ナノろ過およびAOP処理などの新たな技術で実際の処理データでは不十分な処理プロセスについては文献調査などによりその性能、適用範囲等を明らかにし、新たな処理システムに組み入れることとしている。今後は、実浄水場のデータによる各浄水プロセスの機能評価を完成させ、想定する各浄水システムの性能評価を行っていくこととしている。
また、鉄系凝集剤と膜ろ過処理を組み合わせた研究データがほとんどないことから、神奈川県内広域水道企業団綾瀬浄水場内の合同実験施設を使用して、凝集剤注入率や撹拌条件、前処理方法等について、プラント実験によりシステム評価のための実験を行っている(写真1)。
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(a)凝集沈殿設備 |
(b)膜ろ過設備 |
写真1 プラント実験施設 |
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平成19年度は、通常処理と比較して凝集剤注入率の低減化(1/3〜1/4)を図るとともに、アルミニウム系および鉄系凝集剤と膜ろ過の組合せによる運転条件を確立する予定である。
原水・浄水水質および原水水質に影響を与える因子に関するデータを幅広く収集し、原水水質の分類・評価・解析に関する研究を行っている。原水水質特性を把握する上で必要な既存水質関連情報として、全国の上水道・水道用水供給事業の総水量の約40%の浄水場から入手した水質データ等について、時間変動、経年動向、地域特性等、さまざまな視点から分析、統計的解析を行っている。既存浄水場のデータ等を用いて単位プロセスごとに分析・評価を行ったところ、原水水質と浄水プロセスの適合性、単位プロセスの適用範囲、水道事業体の規模による水質管理などの差が明らかとなった。現在、浄水フローと原水水質の関係、水源評価指標の提言および原水水質モニタリングやデータの蓄積のあり方等について、検討している。
浄水処理プロセスごとに水質や維持管理性等の面から評価を行い、浄水処理技術の確立を図ることを目的とした研究を行っている。これまで浄水処理プロセスの検討に当たって考慮すべき主要水質項目(濁度、色度、過マンガン酸カリウム消費量、2-MIB、ジェオスミン)について、基本処理システム毎に整理を行い、全体的な傾向の把握を行った。また、実際に稼働している浄水場に対してヒアリング調査を行い、水質および浄水処理に係わる薬品注入率等のデータやデータとして表現しきれない処理機能を維持するための運転管理上の留意事項等の情報収集を行った。現在、各浄水プロセスの処理性能と設計諸元や運転条件等のデータとの関連性について統計的手法を用いて解析・調査を行い、各浄水プロセスの機能評価を行っている。
温暖化の進行と影響に関する深刻な調査結果が明らかにされている中、水道においても「省エネ法」による一定規模以上の浄水場における省エネ活動報告の義務化などに伴い、環境に対する取り組みが一層求められている。本委員会では、水道事業体が環境評価としてライフサイクル・アセスメント(LCA)を行う際の方法を確立し、広く水道事業体に提供することを目的とした研究を行っている。これまでの試算結果では、浄水処理施設のライフサイクル全体でのエネルギー消費量、CO2排出量を評価した結果、ポンプ動力のほか、薬品や活性炭などの消耗品に関する負荷も比較的大きな値を示すという結果が得られている。LCAの手法を用いた定量的かつ長期的な評価は、ポンプの運転方法や消耗品の使用に関する継続的な改善に非常に有効であり、本研究の成果として作成予定の「浄水施設を対象としたLCA実施マニュアル」が広く水道関係者に利用され、より低環境負荷型の浄水技術の開発・普及に寄与することを期待する。
おいしい水を目指して、臭気原因物質等に関する検出・評価方法についての検討、対策技術の選定手法の確立に関する研究を行っている。また、河川において水質事故等が発生した場合の水質汚染の流下状況について、水質予測モデルを用いたシミュレーションによる影響予測の検討を行っている。 さらに、臭気原因物質の迅速検知を目的として、相模川水系の寒川取水場内に臭気物質検出実験装置(VOC計、写真2)を設置し、オンライン監視を行うとともに、油分計、油膜計、濁度計、pH計、アンモニア濃度計、電導率計等の複数のセンサーによる連続記録データと併せて、未知の臭気原因物質との関連因子について調査している。また、VOC23成分の添加試験を実施し、物質ごとの検出限界などを調査している。 |
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持ち込み研究は、e-WaterUプロジェクトに参画している水道事業体・企業等が、それぞれ独自の実験装置を持ち込んで行う実証実験で、学識者の指導・助言のもと研究計画を策定し、各研究実施者の責任において、表1のとおり10件の研究課題が実施されている。
| 研究課題 | 研究実施者 | 実験場所 |
|---|---|---|
| 微粉炭添加セラ膜システムによる高度浄水処理技術開発研究 | 日本ガイシ(株)、 北海道大学、横浜市水道局 |
横浜市水道局川井浄水場 |
| 低軌道通信衛星システムによる浄水データ監視システム | (株)ウエルシィ | 埼玉県横瀬町姿見山浄水場 |
| 前処理と膜ろ過の適正な連携制御方式および高感度膜損傷検知方式の確立 | (株)日立製作所 | 日立市企業局森山浄水場 |
| 地下水の高度浄水処理技術に関する研究 | 三井造船(株)、 (株)荏原製作所、 (株)ユアサメンブレンシステム |
熊本市水道局一本木水源地 |
| 安全対策強化型紫外線消毒システムの確立 | (株)東芝、川崎市水道局 | 川崎市水道局長沢浄水場 |
| 温度応答性膜を用いた環境負荷低減型膜ろ過システムの確立 | (株)東芝、川崎市水道局 | 川崎市水道局長沢浄水場 |
| NF膜を用いた高度浄水処理システムの開発 | (株)日立プラントテクノロジー、 前澤工業(株)、東洋紡績(株) |
日立市企業局森山浄水場 |
| 膜ろ過と活性炭処理の組合せによる高度な浄水技術の開発 | 月島機械(株) | 富津市水道部 |
| メンブレンとメディアの積極的協調による新しい固液分離技術 | 阪神水道企業団、 (株)神鋼環境ソリューション、 (株)クボタ |
阪神水道企業団猪名川浄水場 |
| 生物・活性炭処理と膜処理のハイブリッド型膜ろ過システムの開発 | (株)神鋼環境ソリューション | 斑鳩町第一浄水場 |